【イングランド遠征(1)】マンチェスター・ユナイテッド vs アーセナル

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本場の空気を一度は感じて来ようと、5/15~20までイングランドに遠征して来ました。

5/16(土)
前日からの強行軍で疲れていたせいか、早起きは出来ずに8時半くらいに目を覚ます。宿泊したMANCHESTER DAYS HOTELの朝食は、追加料金を払わないでもバイキング形式で食べる事が出来る。塩が利いたベーコンが、この上なく美味しい。

腹ごしらえをして、マンチェスターピカデリー駅からメトロリンクに乗ろうとすると、チケットを買った後に、この日は工事だとかで動いていないらしい事がわかる。
とりあえず、マンUのユニフォームを着ている人たちについていくと、振替輸送のバスが停まっていた。これに乗り換えて、「G-Mex」駅から改めてメトロリンクに乗り、ようやっと「Old Trafford」駅まで到着する事が出来た。

「Old Trafford」駅は、普段は無人駅。ホームに券売機があるだけの寂しい感じ。
その駅から、スタジアムまでは一本道になっている。10分も歩けば、迷う事無くスタジアムに着くことが出来る。途中、バーガーやケバブの店や、たくさんの露店が軒を連ねていて、オリジナルのマフラーや、気の早い優勝記念Tシャツを売る物売りがあっちこっちで声を張り上げている。

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ただこの日は、決まれば3連覇となるリーグ優勝が決まりそうと言う事よりも、もう10日後に迫ったチャンピオンズリーグの決勝に気が向いてしまっているようで、露店で売っているものも、それを意識したものばかりになっていた。
マフラーもバリセロナが半分デザインされたものだし、フラッグも、決勝が行われるローマの象徴“コロッセオ”がデザインされたものになっている。また、ローマ兵が被っていた兜のレプリカもあっちこっちで売っていた。

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面白げなものはないかと、ウロウロしていると、目の前にいきなり巨大な「馬」が。
翌日のロンドンでもそうだったが、イングランドは普通に「馬」が居るのに驚かされる。
イベントの一環として連れて来られている馬も居れば、警察跨って警戒にあたっている。馬も居る。蹴っ飛ばされないようにと、道端に落ちている馬糞には要注意だ。

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そんな喧騒を楽しみながら、スタジアムまでたどり着く。
公園とか、広場とかそういうものがほとんど無く、いきなり旧い街並みの屋根の向こうに現れるオールド・トラッフォード。赤と白、それと翠がかった蒼のガラスが美しい、日本のスタジアムには無い存在感がある。大きく「Manchester UNITED」の文字。
正面に併設されているメガストアからは、人が溢れてしまっている。

スタジアム外の混雑と、雰囲気にちょっと圧倒されてしまい、早くスタジアムの中に入りたくなってしまった。本当は、もう少し外をぐるりと回ろうと思っていたのだが、プログラムと、マフラーを仕入れてスタジアムの中へ。
入口は、ごっついバーが回転する形になっていて、チケットを機械に差し込むと、入れるようになっている。

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中に入ったのは、キックオフの1時間ほど前だったが、席にはほとんど人が居ない。全席指定のせいだろうか?スタジアムグルメも、残念ながら中にはあまり種類がなかった。このへんは、日本の方が充実している。
スタジアムも、公園のようにくくられていなくて、街並みのすぐ中にあるから、試合前は外で楽しんで、試合前になったらスタジアムへと言う文化なのかもしれない。

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さて、席は北側のスタンドの下層だったが、スタジアム全体の圧迫感がすごい。長方形のスタンドが、高い壁のように三階層に分かれてフィールドに迫ってきている。7万数千を収容する巨大なスタジアムでありながら、それよりもずっとコンパクトに感じる。
赤一色のスタンド。あちこちにある、エンブレムと「UNITED」「THEATERE OF DREAMS」の文字が、公共施設ではなく、ここがマンチェスター・ユナイテッドと言うクラブの文字通り「ホーム」であることを強く感じさせる。

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人が居ないおかげで、写真は撮り易いのだが、チケット周辺のスタンドしか移動する事が出来ず、なかなか思ったアングルで撮影できない。大きすぎるので、全体が収まってくれないのだ。撮ってるうちに気付いたが、ここにはオーロラビジョンが無い。そんなものは必要ないから、ピッチに集中しろと言う事だろうか?

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そうこうしているうちに試合時間は近くなって来て、試合前の練習が始まる。
自分のすぐ前では、アウェイのアーセナルが練習を始める。セスク・ファブガレスや、アルシャービン、ウォルコットをはじめ、TVでしか目にした事の無い選手達が目の前と言うのは、なかなか壮観な光景だ。
しばらくして、ユナイテッドの選手たちも姿を現す。一際大きな拍手がスタジアムをつつむ。

日本だったら、ここらで応援が始まるところだが、練習が始まろうが、1回目の選手紹介が終わろうが、15分前になってもスタンドはガラガラ。
どんだけマイペースなんだか。
アウェイのアーセナルサポーターのほうが、入りがいいくらいだ。

場内は、「ケセラセラ」や「カントリーロード」がローテーションで流されている。「ケセラセラ」のサビの部分で、スタンドの一角を陣取ったアーセナルサポーターとの掛け合いもあった。何を掛け合ってるかはわからないが(苦笑)
コールで、何より目立ったのはテベスへの「アルゼンチナ!」の嵐。ファーガソン監督の構想外とも言われ、シーズン終了後の移籍が言われている彼だったが、スタンドからの声援は、まるで彼だけの為のものであるようだった。どれだけ彼がユナイテッドで愛されていたか、思い知らされるシーンだった。

キックオフ前、選手達が控え室に下がり、大音響の「ケセラセラ」がまた流される。
どこに今まで居たのか、スタンドもいっぱいに埋まっていく。イングランドの場合、コールリーダーが居る感じでもなく、まるで池に波紋が広がるように、スタンドの何処からともなく始まったコールが、一気に全体へと拡がっていく。

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そしていよいよ選手入場。
どうしても、アーセナルの「黄色い」ユニの方に気が行ってしまうのは、自らの性として仕方が無いか。

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キックオフと共に、キック&ラッシュの連続だ。
目の前に、ルーニーや、ギグスが猛烈なスピードでパスを交換しながら上がって来る。かつて、2002年のW杯でも感じた事だが、こいつらは、上手いだけじゃなく、本当に走るし、きっちり競るし、地味な仕事だってしっかりこなしている。ルーニーが身体
張って守備しているのを何度だって見たし、逆サイドを、猛烈なスピードで駆け上がったC・ロナウドが、次の瞬間には自陣に猛ダッシュで戻って守備しているところも何度もみた。

かつて見た、バティがそうであったように、そういう基礎がしっかりした上で、技術があり、判断が早い。それが「こちら側の世界」では、当たり前なんだろうが。。。

システムや、戦術自体は、どちらのチームもジェフでミラー監督がやろうとしている事に近かったようにも思う。4-3-3のシステムで、前に当てるか、サイドの裏を狙うかのカウンター狙い。

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マンチェスターは、テベスをセンターFWに、両翼にC・ロナウドとルーニーを配する布陣。時に両翼を入れ替え、時にギグスやキャリックがFWを追い越して行くなど変幻自在。
システムや狙いが一緒だとしても、その正確さと速さ、そしてフォーローの速さが全く違う。
猛烈なスピードでドリブルを仕掛けながら、またぎフェイントまでかますわ、その選手のさらに大外から、「どこから出てきた!?」と思うような選手が飛び出して来たり、相手ディフェンスは全くをもって気の抜きどころがない。

もちろん、アーセナルもそれと同じレベルで反撃を仕掛ける。
目の前で優勝を見せ付けられたくないのは、当たり前の事だろう。

そして、ゲームは、引き分けでも優勝のユナイテッドが、若干だが守備にウェイトを置いた感じでゲームをコントロールしていく。

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ルーニーのヘッド、ギグスが抜け出してのシュート、さらにはC・ロナウドのFKと見せ場はあるのだが、点にはならない。力が拮抗しているせいか、その見せ場自体も決して多くはなく、C・ロナウドの動きもだいぶ制限されているように見えた。

惜しいチャンスがある度に、皆が一斉に立ち上がるので、オオーッと言う低い歓声と共に、折りたたみ式の椅子の座面が跳ね上がってスタジアム全体から地鳴りのような音がいちいちする。
チャントは、だらだらと長い事はなく、短いチャントと歓声、そしてブーイングの繰り返しと言った感じだ。ゲームの展開と関係ないような反応が無いのは心地いい。
ピッチの中も、展開は目まぐるしいが、あまり審判が目立つ事もなく、ボールが途切れない。だから、ずいぶん体感の試合時間が短く感じた。

スコアレスのまま、前半を終了。
後半は、自分から見て遠いゴールへマンチェスターが攻めるので、ちょっと見づらい。
やっぱり、ピッチと余裕の無い直線型のスタジアムだと、どうしても角度の無いサイドは死角になってしまう。ただでさえ見づらい上に、チャンスの度に体のやたらデカイおっちゃんが立ち上がってしまったり、途中から通り雨に見舞われたりと後半の観戦はなかなか難儀。

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そんな中、展開は大きく変わらず、ゲームは進んで行く。
テベスに一回ビッグチャンスがあったが、それもトラップが大きくなってしまった。そのテベスは途中でパク・チソンと交代。再び大きな「アルゼンチナ!」コールがスタジアムを包み、手を叩きながらテベスが去っていく姿はなかなか感動的だった。

試合は、段々と「優勝」に向けてペースを落としていく。
終盤になると、アーセナルもそこまで無理無理に点を奪いに来ない。途中出場のウォルコットにも、数回しかボールがしっかり収まらなかったように思う。

スタンドはまた「ケセラセラ」の大合唱。
総立ちのスタンドが優勝の瞬間を心待ちにする。
こう言う、無難に過ごせばいい時間を、無難に使い切る事ができるのが、優勝をするチームの強さたる所以なのだろう。0-0で良いと割り切れば、そのようにゲームを終わらせることができる。彼らの力を持ってすれば、マイボールを続けて守りきる事など、さほど難しい事ではないのだ。

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交代も効果的に使いながら、慌てる事もなく時間を使い切るユナイテッド。
見事にプレミアリーグ3連覇達成。その瞬間の、えも言われぬ大歓声と、天に突き上げられる無数の拳の向こうに、喜び合う選手達が見える。感極まった、うしろのおっちゃんに抱きつかれてキスをされたりしてしまった。
ベンチに下がっていたテベスらも飛び出してきて、フィールドで輪になって踊る選手達。本場モノの「We are the champion」と「カンピオーネ」が響く。
その姿に、数年前の国立の情景が重なって、「いいなあ、優勝したいなあ」と心から思ってしまった。どんなに感動的な光景でも、やっぱり「他人ごと」。羨ましいし、自分のクラブが恋しくなった。

しばらくして、優勝セレモニーの準備が整い、再び大歓声で選手たちが迎えられる。
お立ち台の上で、無数の紙吹雪、テープと煙の中で、シャンパンをかけ合う選手たち。その瞬間、しばらく前まで雨も降っていたオールド・トラッフォードの空が蒼く開け、赤い紙吹雪が風に乗って舞う光景が、この上なく綺麗だった。

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優勝の余韻に浸り、スタジアムを後にすると、外のバーではもうすっかり酒盛りが始まっていた。帰りのメトロ駅でも、メトロの中でも、サポーターがコールを大声で歌いまくる。この辺は、イングランド的なんだろうな。

そんな空気を感じながら、翌日の観戦に向け、マンチェスターピカデリー駅から特急
乗車。ロンドンの宿に着いたのが22時くらいだったか。慌しい一日が、ようやく終わった。

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