期待と不安の渦巻く ちばぎん

期待と不安の渦巻く ちばぎん

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木山ジェフは、今季初観戦。
新体制発表での力強い言葉と、ファン感での和やかな空気と。
雰囲気は悪くない。さて、どんなサッカーを見せてくれるのか。
変化の片鱗だけでも感じ取れればとゲームに臨んだ。


柏はガチのメンバー。
ただ、今年の調整はゆっくりとした流れとの事で、この試合が初めての対外試合になるとのこと。
キャンプで身体をいじめてきた後であることだし、開幕までも二週間ある。柏としたら、この試合はピークではなく、調整の中での一つの過程。それに対してジェフは、来週に開幕を控え、どんどんとペースを上げて来ているところ。その差が果たしてどうなるだろうか。

ジェフは4-4-2システム。
GK岡本、DF(左から)武田・山口智・竹内・坂本、
ボランチ兵働・勇人、左に深井、右に大介、
FWが、米倉と藤田

キックオフと共に、ラッシュをかけたのはジェフ。
まだ身体の重たそうな柏を尻目に、仕上がりの良さを見せる。

去年と何が違うか。

まず、繋ぐようになった。繋げられるようになった。
全体の運動量が増え、スピードが上がった。プレーも、判断も。
リスタートも、格段に早い。相手が整う前に動き出す。
バックパスが減り、ベクトルが「前へ」になった。
フィニッシュで終わる事も、意識付けされている。 

去年までの退屈極まりないサッカーがなりを潜め、久々に観ていて面白みのある、「動き」のあるサッカーになっていた。

その中心になっていたのが、ディフェンスの山口智と、ボランチに入った兵働。
この二人が、格段に上手い。

サトシは、相手にプレッシャーをかけられても動ずる事無く、冷静にいなして、冷静に繋いでいく。
当てずっぽうなボールが前線に放り込まれるのではなく、攻撃の意図を込められたボールが、配球されていく。

兵働は、中盤でしっかりとボールを収めて、そこから両翼へ展開する。
走り出しのタイミングが良く訓練されているのだろう。そのボールが、攻め上がったサイドの選手のスピードを殺さないような絶妙な散らし具合だ。

二人が真ん中に入ったことで、ピンっと、背骨がチームに入ったような締まったプレーになっている。
影響はプレーだけでない。二人とも清水やG大阪で主将を務めた実績もある選手。落ち着きや、周囲への指示、気遣いが、試合中にも端々に見て取れる。おかげで、勇人の負担が、心身両面で、ずいぶんと軽減しているようだ。

他の新戦力も良いプレー振りだった。

左サイドに入った武田の、攻撃参加は、良い意味で裏切ってくれた。タイミングも、スピードも、クロスも、これまでの選手のそれを上回っていて、この試合の出来であれば、間違いなく「補強」になっている。
対面は、U-23代表で売り出し中の酒井だったが、ものともせずに、好クロスを上げていた。
失点の原因になったのは残念だったが、それはリーグ戦で取り返して欲しい。

藤田も全盛期の巻を彷彿とさせるような、運動量のある泥臭いチェイシングで相手の守備に息つく暇を与えず、チャンスには思い切りの良いシュートで、期待の持てるプレーだった。

そんな、各選手の良さが見えた前半は、ポストやバー直撃3つを含む、惜しいチャンスを量産した。
柏に攻められる場面もあったものの、選手同士がよく連携して挟み込んで、ゴールを許す事は無かった。
「こんなに飛ばして大丈夫なのか?」「夏場にこのサッカーは辛くないか?」とか考えてしまったが、上々の前半と言って良いだろう。

さらに期待の高まった後半だったが、やはりなかなか90分思いのままとは行かなかった。
柏はロボを投入。反撃に出る。
ケチの付き始めは、米倉の負傷退場。
後に全治2ヶ月半の骨折と判明するこの怪我で、佐藤健太郎が交代出場。

佐藤健太郎は、ボランチに入って、右サイドに兵働が移る。
キャンプは負傷でほぼ棒に振ったため、連携はまだまだこれからと言う感じなんだろうか。
明らかに、中盤の動きがぎこちなくなった。兵働の「繋ぎ」が無くなり、単に「潰し」と言う感じになって展開が出来ない。その隙を柏は見逃してはくれなかった。

やや動きの鈍くなったジェフに、前線からのプレスを仕掛けて武田のミスパスを引き出す。
フィニッシュは工藤。あっさりゴール。
そこまでが良い流れだっただけに、「なんだよ」とガックリくる失点だった。

反撃を試みるジェフは、深井が奮闘しつつ、大岩・田中・荒田と、次々と投入して同点を狙う。
各選手とも、大岩なら落ち着いた守備、田中ならスピードとパス、荒田は動き出しの良さと、それぞれに持ち味を発揮してくれた。が、一点が遠い。惜しいところまでは行くのだけれども、フィニッシュが決まらない。

最後の最後まで、攻める意欲は見せたものの。
残念ながらそのままタイムアップ。0-1の敗戦となってしまった。

何はともあれ、また今年も昨年とはガラリと目指すサッカーが変わった。
木山監督の目指すものの一端が、ありありと伝わって来たのは良かった。
少なくとも、今日のようなサッカーを続け、レベルアップして行くなら、サポの共感は得られ易いだろう。

「バックパスの少ない試合って気持ちいい」
そんなレベルからのスタートなんだから、我々は。
そして、久々に活き活きとした選手達の姿が見られたのは何より良かった。

さて、シーズン開幕は一週間後。
良いゲームはしたが、不安はある。その一つは、決定力を欠いたフィニッシュの部分。 
多くのチャンスを作りながら決め切れなかったのは、同じく良いゲームをしながら開幕三連敗を喫した、2001年の春を思い出す。あの時は、加入したばかりのヨンスがコンディション不良から戻ってきて、「決定力」の問題を拭い去った。

今年のジェフに、ヨンスにあたる選手はいない。
オーロイも、このサッカーの中で居場所があるのかどうかは、危ういところだ。
フィニッシュのできる、助っ人が居たならと、秋に後悔する事にならないよう、願わずにはいられない。

さらに、山口や兵働の代わりなんていないこと。
良い選手だし、間違いなく良い補強になっているものの、不在の時に穴が大きくなってしまう。
どう底上げが出来るのかが、今後の大きなテーマになりそうだ。

総じて、「目指すサッカーが垣間見えた」面白いゲームではあった。
だが、このチームが「勝てるチーム」なのかは分からない。

来週は開幕、そして山形・京都と言う、いきなり正念場のゲームになる。
決して楽には行かないだろう。もしかしたら、連敗だってあるかも知れない。
けれど、 今年こそは苦しい時にこそ踏ん張って、一年間、目指すサッカーをぶれずに追いかけるんだと覚悟
して応援して行きたい。二年・三年と、目指すものが変わらなければ、きっと強くなれる。

さあ、長いシーズンの始まりだ。